二面性を司る冬の星の竜。キョウロウの守護竜。
高潔にして低俗。寡黙にして雄弁。
竜態は、霧か霞を縒り合わせた長縄のような不思議な体躯。普段は淡く銀色に煌めいている。瞳や手足は無く、首と胴の中程と尾の辺りに、天球儀を平たくしたような形の光輪を持つ。基本的にはこの姿形で知られるが、時には四肢を生やして大地を踏みしめたり、瞳のような形の光を灯して人間と相対したり、少しずつ形を変えることがある。
人間態は男性態と女性態の2つが存在する。共通して膝に達する程の長い銀髪を光輪で緩く束ねていて、男性態は切れ長の赤い瞳、女性態は円らな青い瞳を持つ。
男性態は寡黙でかつ冷徹。街の秩序を乱す者に対して容赦無く制裁を下すことで恐れられている。また、この姿の時は必ず吹雪になる為、「冷たき竜鎚」とも呼ばれている。
女性態は朗らかで天真爛漫。人との対話を好み、この姿の時は必ず晴天になることもあって「冬晴れさん」と呼ばれ、取り分け子供達に親しまれている。
甘いものが好物であることでも知られ、竜堂には月に一度街の職人が腕を振るったお菓子が納められる。受け取りにやって来る時は必ず女性態で現れる為、一部の者からは女性態は「照れ隠しの姿」とも呼ばれている。
「……人は、生きるが故に死する」
「人は、死が待っているからこそ、強く生きるんだよ」